次のビリオン Coming Exhibition

山本皓一写真展&講演会
「大河メコン漂流」

2018年8月11日(土・祝)・8月12日(日)
展示:13時〜18時/入場無料
講演:17時〜19時
講演会費1500円(飲み物代とも)
講演会定員=先着各30名 予約受付中:Facebookメッセージ欄、またはメールsiltaki_23@nifty.com、電話=090-3332-5170山本まで日時指定でお申し込みください)

畏友の島本修二、渡辺達生さんらが主催するイベントスペース・ビリオンで急遽、写真展&講演会を開催することになりました。一昨年来4度に渡って放浪した メコン川周辺をテーマとした体験の中間報告会です。

「メコンで考えたこと」
この10年間ほどに3度のチベットやインダス、長江などを歩き、大河源流地帯を経験してから、どうやらメコンに取り憑かれたようだ。アマゾン、ミシシッピー、ナイルなど世界の大河の本流は概ね同一国内を流れている(ライン、ドナウなど欧州の川は除く)。

だが、メコン河だけは、チベット、中国雲南省をへてタイ、ラオス、ミャンマー、そしてカンボジア、ベトナムの7つの国と地域を4千数百キロにわたって流れる。インドシナ半島の諸民族、山岳少数民族など多くの雑多な人間たちが、言語、風俗、慣習など、それぞれの文化やアイデンティティ、歴史を超えて共存し、大河の恵みを均等に受けているのだ。もともとインドシナ半島は、中東諸国と同じように列強の植民地支配を経て、線引きされた国々だ。20世紀の世界戦争の後もポルポト時代の内戦による虐殺、ベトナム戦争、中越戦争、軍事クーデターなど殺戮の悲劇を繰り返した後の現在、新しい近代化の時代が始まっているのだ。
父親の世代の多くを「Killing Fields」で亡くしたカンボジアの国民平均年齢は約23歳、父祖の世代が犠牲になったベトナムのそれは約30歳と、大きな可能性を秘めた若い世代が国家形成の中心層だ。かてて加えて半島の食料自給率はとてつもなく高い。熱帯雨林の風土で、米は2毛作、メコンからは豊富な漁獲を得ている。子供が10 歳になると多くの親たちは投網を買い与える。メコンの河で投げれば魚が得られる。子供が生まれるとサトウ椰子とバナナの木を植える。共に成長するに従い、果実を実らせ、それで腹を満たせば飢え死にはしない。もっとも大事な「食べられる」という生きる権利を大自然によって保障されているのだ。

私個人の勝手な妄想だが、もし仮に某国と某国による核戦争や紛争が勃発し、世界の国々が巻き込まれ、破滅の道を余儀なくされたとしても、最終的に生き残れる地域は、このインドシナ半島ではないかと思っている。

雨季の終わり。水量を増し、激流となったメコンをスローな船で遡上する。沿岸のジャングルから吠え猿の叫び声を聴きながら、眼は両岸でのったりと草を食む野生のバッファローを眺めながらガラにもなく考えた。
私にとって、このメコン放浪の旅は己自身の「原点回帰」ではなかったか。
幼い頃から奇想天外な夢に憧れ、秘境に関して好奇心を目いっぱい募らせた結果が、写真家として実に雑多なテーマに取り組むことに繋がった。「まだ誰も見ていないものを撮りたい」この想いが結果として「目白の秘境・角栄密着」や「朝鮮半島」「日本や世界の国境」などの仕事に繋がったのかもしれない。

もちろん現在の地球は狭くなって「秘境」や「未知の被写体」は、そう多くはない。メコン流域にしても、このところ平和が続き、世界から多くの観光客が自由に往来できる時代になっている。だが、やはり私にとっては「秘境」のままなのだ。

すでに老骨に至り、足腰も弱ってきた。人生の黄昏に向かう今、少年の頃に夢想した、その想いがメコンに象徴されているのではないだろうか。私のメコン漂流はまだまだ続きそうな予感がする。